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2006年03月28日

幸福論

 忌屋 陰郎。31歳。独身。帰宅しても出迎えてくれる人がいるわけでもなく、家は電灯ひとつついていない。時折部屋が明るいことがあるが、それは朝出かけるときに消し忘れただけのことなので余計に侘しくなる。当然暖かい食事が待っているわけもない。忙しくなれば自炊などというのはとんでもない贅沢となり果てる。

 3月の末。忙しい時期が過ぎ去った。しばらくすればまた忙しくなるのだが、それでも束の間の平穏な日々である。米を炊き、自宅で夕食を食べる。もちろん一人で。おかずがあるわけでもない。米と味噌汁だけである。まだ魚を焼いたりするような心の余裕はないのだ。茶碗2つ、スイッチの入っていないこたつに足を突っ込んで食べる。

 でも、幸せだ。

 世間一般の幸福について語ろうなどと大それたことを考えてはいない。しかし、なにもかもを駆け足で通り過ぎるような生活をしていると、つい自分の足元に目が向かなくなる...だから自分の幸福について考えるのだ。ひとまずは手に職があり、屋根の下に住めて、どうにかこうにか毎日を生きていられる。時には自分で粗末ながらも食事を作って食べることもできる。それどころか、自分の好きな開発を少しずつでも続けていられるではないか。当たり前のことのようだが、それが当たり前であるということが幸福なのだ。しかしそれは当たり前であるがゆえに背景や空気のようなもので、意図して目を向けなければ注意をひくことはない。向上心を持ち続けることは良いことだが、既にある幸福を当然のものとして無視してしまうこととは少し違う。それは感覚を狂わせる。願わくば、地に足のついた生活を。

投稿者 kagelow : 2006年03月28日 23:59

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